シュンニョの事故

生命が危険にさらされたとき、突然すべての細胞が目覚め、明晰に気づいてる瞬間が訪れることがあります。OSHOがトータルでいなさいということの意味が分かる瞬間です。

あるいは瞑想ということについて、目覚めて、気づいているという瞬間。

「今ここ」にいるという瞬間です。

なぜなら命が危険にさらされたときには、まさに今この瞬間しかなく、その瞬間に目覚めていることが唯一のことになるからです。ロックルラミングなど危険なスポーツに挑む人たちがいます。一つ間違えば命を落とします。

高所恐怖症気味の私には理解できないスポーツですが、瞑想という観点ではよくわかります。その生命が危険にさらされているときの明晰な意識の状態を味わえるからではないかと思います。

その明晰な意識の状態という瞑想感覚はある快感があって、病みつきになってしまうものでもあります。

私は、高所恐怖であるがゆえに、わざと高いところに挑戦していた時期というのがありました。北アルプスを縦断するときにはそのような恐怖に直面する箇所が多々あります。

特に今でも思い出すのが、極端に尾根が狭くなっているところがあり、両脇が崖で、綱渡りのようにして歩かなければならない箇所がありました。ちょっとでもバランスを崩すと谷底に落ちて命がありません。そういうときには、まさに全細胞の意識が目覚める瞬間です。

5年前に死にかけて命拾いしたことがあります。
そのとき、出血多量で意識を失ったのですが、私の名前を呼ぶ声に気づき、そのとき意識が身体に戻ってくることが感じられました。意識が戻って自分の状況がわかると同時に、救急隊員が担架を私のわきに持ってきて、担架に乗せられ、救急車に運び込まれました。隊員が病院と連絡を取りながら搬送する病院を決め、病院に搬送され、手術されるまでのことを、そこにいる人たちの動作や言動や状況を、なんの感情も思考もなく、明晰な意識だけがあって、ただそこで起こっている状況を観ているという感覚だけがありました。

今回のシュンニョの事故の体験というのは、そのような体験だったようです。

彼女はその体験を「その晩、私は自分の内側にある明晰さに触れました。それは価値ある体験でした」と回想しています。

でも、そのような瞑想の意識状態は、そこまで極端な場合でなくても、ジョギングで30分ほど走っていると起こるランナーズハイの状態や、車を高速で飛ばしているときなどにも,それに似た意識の状態になります。そんなことをしなくても、ただ瞑想していることで起こってくる意識でもあります。

シュンニョは書いています。

「ある晩、島を強風が襲いました。海は荒れ、風は木々を揺さぶってびゅうびゅうと吹き荒れました。アヴィルバヴァのボーイフレンドのサルヴェッシュと私は、オートバイに乗って風に髪をなびかせてみたいと思いました。

マ・アムリットが私たちの前に立ちふさがり、両手を広げて言いました──「だめよ、このオートバイには乗せられないわ」。

それは750CCのレーシングバイクでした。そのうえサルベッシュは、15年前の大学時代から一度もオートバイを運転していないと言っていました。

それでも私たちはその気になっていたので、オートバイにまたがると、丘を下ったところにあるアジオス•ニコラスの町へと向かいました。

5分もしないうちに、私には、サルヴェッシュがオートバイを乗りこなせていないのが感じられました。海岸線でコーナーを曲がるとき、一陣の風が私たちのオートバイを襲いました。

オートバイは私たちの下で横だおしになり、私は自分の顔がサルベッシュの背中を滑り落ちるのを感じました。私は道路のまんなかにうつぶせになって倒れていました。

口のなかに血の味がしたので、舌で歯を調べてみます。歯は全部ありました。大丈夫です。顔と鼻から血が流れ、両手に切り傷があり、ズボンは破れ、靴が片方見当たらず、足首は腫れています。

それでも意識は明瞭でした。こんな事故ははじめてでしたので、私は自分の感じている明晰さと落ち着きに驚きました。

サルヴェッシュは、血だまりのなかにうつぶせになっています。頭から血が出ていました。私は彼のからだを見て、どうしていいかわかりませんが、彼は大丈夫だと感じました。次に彼の名前を呼びましたが、彼は意識を失っています。

私は、自分がまわりの人たちに指示をしているのを観ていました。あなたは警察に電話して、あなたはオートバイを片付けて、あなたは別荘に電話して‥‥‥という具合いです。私は別荘の6桁の電話番号を覚えていました。

私たちは病院へ行きました。サルヴェッシュは病院についてからも、40分間意識を回復しませんでした。それでも私には、彼は大丈夫だという確信がありました。

その晩、私は自分の内側にある明晰さに触れました。それは価値ある体験でした。

翌日、OSHOからのメッセージを受け取りました。
オートバイで出かけた私は「おろかだ!」というメッセージです。

私たちは病院までサルヴェッシュを迎えにいきました。彼の顔は真っ青で、人相の見分けもつきません。強度の脳しんとうを起こしていたのですが、やがて完全に回復しました。

事故の翌日、私は一昼夜眠りつづけました。翌々日なんとか起き上がったものの、2, 3分太陽の光を浴びただけで目まいがしました。目まいは脳しんとうの症候だと医者のジョンから言われたので、私はベッドに戻りました

 

「和尚と過ごしたダイアモンドの日々」

(本書は絶版になっています。 お問い合わせはinfo@oejbooks.comまで)